第4回:夏休みにスピーカーを工作してみたい!……ですが、スピーカーのスペックもわかりません。

スピーカー・ユニットのスペックに入っている用語と数字について教えてください。ただし、文系人間で数字がとても苦手。数字が出てくると眠くなります。逃げ出したくなります。8:00ちょうどに大月駅(山梨県)を出る東京行きの「あずさ2号」で旅立ちたくなります。だから、なるべくお手柔らかにお願いします!

電車の号数や時刻なんかはすらすら出てくるのに……本当に数字が苦手なんですか? では、なるべくやさしく解説をしたいと思います。まずは形式出力音圧レベル(dB)入力インピーダンス(Ω)許容入力(W)周波数特性(Hz)。それから、f0Q0m0ですか? それはスピーカーを自作する人に必要な数字となりますので、がんばってついてきてくださいね。

ああ……。スピーカー・キットを選ぶときにスペックを見て固まった記憶のある、なんか見たことあるけど難しくてよくわからない言葉たちですね。でも、がんばってみます!

まず、簡単なところから、形式はダイナミック型とかドーム型などのユニットの方式が書いてあります。これは前回話しましたね。

次の出力音圧レベルは対数のdB(デシベル)で表記し、数字が大きいほど高能率、非力なアンプでも大音量を出せます。電力比では3dBで2倍、20dBで100倍の違いになります。

出力音圧レベルは、1ワット(W)の電力が与えられたときの、スピーカーから1m離れた地点の音圧(音の大きさ)

えっと……。つまり、スピーカーは能率は高いほどいいということでしょうか。dBはアンプのボリュームに書いてある数字ですね。デシベルって、少しの数字の違いで、そんなに電力に差があるんですね。

 

 

 

 

 

 

昔は真空管アンプしかなかったので、出力が数ワットしか出せなかったんですね。だから、100dB以上の高能率スピーカーが必要でした。現在は、トランジスタアンプ(半導体式アンプ)のように、小型で大出力が取り出せるアンプが簡単に手に入るので、そんなに高能率は求められていません
逆に、小型スピーカーで低音を出そうとすると、振動板の振幅を大きくとる必要があるので、重い振動板と強力な磁気回路を搭載することで能率は下がる傾向にあるんですよ。なので、小型スピーカーは90dB以下というモデルも珍しくありません。

なるほど。小型というと、スキャンスピークの5cmユニットは出力音圧レベルが80dBと書いてあるので、能率は低いようですね。

ネオジウムのマグネットが強力と好評です

そうですね。それで、アンプと関係する値として、入力インピーダンスというのがあって……。

え? なにダンス!? 恋ダンス?

逃げるは恥だが役に立つってか!? ガッキー、このブログ読んでくれてるかな!。

きっと読んでくれてる! 読んでもなんのこっちゃ意味わからないと思うけど……デシベルを超えてゆけ〜♪

ちょい! ちょい! テレビ見てる人にしかわからないし、また話がずれてるし! 軌道修正しますよ! 入力インピーダンスは、アンプにかかる負荷ですね。負荷が少なければそれだけ電流が流せるので、8Ω(オーム)負荷で出力50Wのアンプなら、2Ωで200W出せる計算ですが、実際はアンプが大量の電流に耐えられず、保護回路が働くと思います。

大きい電流が流れるのは、アンプにとって良くない?

スピーカーも壊れてしまいます! 高級なアンプほど、低い負荷に耐えられるように強力な電源部を搭載していて、カタログスペックを見ると、200W(8Ω)、400W(4Ω)と、スピーカーの入力インピーダンスに合わせた、計算通りの出力が取り出せることがわかります。

インピーダンスとスピーカーの音質には、何か関係があるのでしょうか?

いえ、スピーカーのインピーダンスはアンプ側の事情で決まることが多く、現在はと低いのが主流です。カーオーディオ用ではもあります。低負荷に強いトランジスタアンプでは、入力インピーダンスを上げる必要はなく、低いほうが出力を出しやすいからです。実際の入力インピーダンスは一定ではなく、周波数によって変化しています。

なぜ周波数で変化するのでしょうか?

グラフを見るとわかりますが、最低共振周波数であるf0付近でインピーダンスはもっとも高くなります。f0はこれから出てくる数値ですが、カンタンに言えば、振動板がもっとも動きやすくなる周波数を示します。今度はフレミング右手の法則を思い出してもらいたいのですが、振動板が動くと、コイルフレミング左手の法則とは逆向きの電流が流れます。これが逆起電力です。発電機もこの原理で電気を起こしています。音が出るときに、アンプが流す電流と逆向きの電流をスピーカーが発電するので、これが抵抗になってインピーダンスが上がるわけです。もっとも振動板の振幅が大きくなるf0付近でインピーダンスは最大になり、他の周波数ではずっと低くなります。

定格インピーダンスは、周波数によって変わるので、最低共振周波数(f0)より上の最低になるところをとって表記

そうか、スピーカーって発電機だったんですね! それで電流が流れやすかったり、流れ難かったりと、これは音質とは関係なさそうですね〜。

そうですね、関係ありません。スピーカーがマルチWayになるとインピーダンスの山が複数になってきます。アンプから見てインピーダンスが問題になるのは、大電流が流れてくる最低インピーダンスのほうなので、カタログスペックでは低域の最小値を表記して、定格インピーダンスと呼んでいます。

さて、次いきますよ! 許容入力というのは読んで字の如し、そのスピーカーが耐えられる電気信号の強さで、単位はW(ワット)。瞬間的に耐えられる入力を最大許容入力と表示しているメーカーもあります。

これを超えて電流が流れると、スピーカーが壊れるかもしれないですね。次は、もっとも気になる周波数特性です。このグラフを読み解くことで、スピーカーの音の秘密がわかるに違いないと思いますが!

 

周波数特性のイメージ_s.jpg

周波数特性のグラフ

その何かに期待する心は素晴らしいですよ! 周波数特性無響室でスピーカー・ユニット軸上1m離れた位置から測定したときに再生される音をグラフで示しています。これは理想的な波形なので、一般家庭で測定しても再現できません。単位はHzです。エンクロージャーは指定箱と呼ばれるものを使っていて、別の箱にユニットを入れると周波数特性も変わってきます。  

それで横軸が音の高低で、上下が音の大きさですよね。つまり左右が広ければワイドレンジで、上下に差がなければフラットな特性。両端が上がっていればドンシャリ型ですね。

知ってるじゃん! でもまあ、理屈だとそうなりますが、周波数特性を見ただけで音の善し悪しはわかりませんよ。あと50Hz〜50kHzと書いてあっても許容出力変動幅というのがあるので、最大音圧から6dB落ちたところの周波数を書いてもいいことになっています。6dB落ちだと音量は1/2になっているので、同じように聴こえるかどうかわかりません。スペックをよく見せるなら−10dBまで表記できる実効周波数帯域を使うという方法もあります。

実効周波数帯域

以前もありましたが、周波数特性も縦軸の単位はdBなんですね、つまり10dB落ちだと音量は1/3。スペックを重視しすぎると数字のマジックに惑わされるかもしれませんね。周波数特性は参考程度に、心の片隅に留めますね!

さあ、次はf0Q0m0ですよ! どれもスピーカーのエンクロージュア設計に必要な数値ですね。f0最低共振周波数です。この周波数より上が、そのスピーカーの音域と考えてよいです。
Q0f0での共振鮮鋭度を示します。スピーカー・ユニットコーン(振動板)エッジダンパーで支えています。振動板を動かすために、これらの部品には弾性があり、そこで共振がおこります。Q0の値が大きいほど共振しやすくバスレフ方式のエンクロージュア向き、数値が小さいならバックロードホーン向きとなります。

Q0の数値が大きいと、コーンやエッジの材質などが共振しやすい設計

どちらもスピーカーの低域に関係しているわけですね。

そうですね、f0で低音の再生限界がわかります。振動板の口径が大きいほど、あるいは振動板が重くなるほど、f0が下がります。でも、ユニットをエンクロージュアに入れるとf0は上がります。これは箱の中の空気が抵抗になるためです。 

ははあ。それで大口径スピーカーほど低音が出せるんですね!

Q0は、0.7ぐらいがフラットな低音になると言われています。レスポンス重視なら数値は小さいほうがいいのですが、低音の量感を出すのが難しくなります。数値が大きくなりすぎると低音は出ますが、制動が効かずにボンボンした音になります。0.5〜1ぐらいのユニットが多いのですが、バックロードホーン用に設計されたフォステクス「FE208EΣ」のQ00.18しかありません。これに対して「FE83En」は0.84あります。バックロードホーン低域の共振が大きいためQ0が低いほうがいいとされています。ちなみに、フォステクスによると、密閉型は0.2〜1、バスレフ型は0.3〜0.6、バックロードホーンは0.2〜0.4ぐらいがいいそうです。

20cmフルレンジユニット「FE208EΣ」(左)と、8cmフルレンジユニット「FE83En」(右)

ふむふむ、Q0の値によって、どんな方式のエンクロージュアに向いているかがわかるんですね。

もうひとつのm0振動系の等価質量です。具体的には振動板エッジダンパーボイスコイルセンターキャップ振動板と共に動く空気の体積まで含めた重さで、単位はg(グラム)になります。m0が重ければ低音が出せますが、重くなれば能率が下がるので、アンプの駆動力が必要になります。
最後に実効振動半径aという数値もスピーカー設計には重要です。ここまで知れば初心者脱却ですが、知識だけでは机上の空論になってしまうので、実際にスピーカーの音を聴いたほうがいいのですが……って、おーい、もしもーし、起きてくださーい!

zzz……。

ああ、たかゆきさんの入力インピーダンスが許容入力を超えてしまったようですね。また次回!

 


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