第11回:真空管に癒されたいけど、その前にわからない!〈基本のキ編〉

最近、めっきり涼しくなって秋の訪れを感じます。人恋しい季節なので、真空管アンプの温かい光と音で癒されたいなぁ〜……って、そもそも真空管って、なんで熱くて光ってるんですか?

フフフ、真空管は単純に見えてなかなか奥が深いんですよ。真空管は誰が発明したか、ご存じかな?

エヘヘ、これで予習してきたのでわかりますよ、フレミングですね!

真空管アンプの特集を組んだ「Stereo」2017年10月号ONTOMO MOOK「真空管アンプ読本」

ブッブブ〜、残念でした。発明したのはトーマス・エジソンなんです。彼が商用化した白熱電球は(発明はジョゼフ・スワン)、長時間点灯しているとカーボン・フィラメントが蒸発して、内部が黒くすすけて暗くなるという弱点がありました。

白熱電球

フィラメント? カーボンは炭素という意味ですよね?

 

 

 

 

フィラメントは、白熱電球のなかで光っている細い線の部分のことですよ。それを当時は炭素で作っていたのですね。で、黒くなるのを解決するため、電球内部に金属板を入れてプラス側に接続し、汚れを集める方法で、1884年に特許を取得しています。

さすが、発明王エジソンですね!

ところが、エジソンは自分が発明した真空管にどんな作用があるかを、正確に把握していませんでした。このまま放置され、1904年にイギリス人のフレミングマルコーニと電磁波検出の共同研究をしているときに、エジソンの真空管のことを思い出して、これを検出器に使うと実用になることがわかり、オシレーション・バルブの特許を取得するのです。

オシレーション・バルブ

まぁ、ここは説明すると長くなるので、ここから真空管が世界各国でバルブと呼ばれるようになって、2極管が誕生した、という歴史的な流れがあるとだけ言っておきましょう。

了解です。ここは流します。にしても、ダメダメですね、エジソン。そして右手の法則などで出てきましたね、フレミング再登場!

ところが、エジソン、やっぱりすごいんですよ。金属板フィラメント正極に接続したときだけ、金属板からフィラメントに向かって電流が流れることに気付き、この電球と論文を国際電気展に出品。後に、これは「エジソン効果」と名付けられています。彼は、電流の値がフィラメントの明るさに比例することも指摘していました。

かなり惜しいですね、エジソン。いろんなモノを発明しているので、真空管だけにかまけている訳にはいかなかったんでしょうか。

フィラメントカソード(冷陰極)と呼ばれ、金属板アノード(陰極線)と名付けられました。アノードは、後にその形状からプレートと呼ばれることになりますが。カソードプレートが真空のガラス管の中に入っているので、2極管(ダイオード)、当時はフレミング・バルブとも呼ばれていました。

フレミングがエジソン効果の実験用に作った2極管。これで高周波の受信に成功。オシレーション・バルブと命名した。量産型はフィラメントはカーボン製、プレートは円筒形になり白金板で作られた。

ほほぉ〜2極管、シンプルなのですね。それで結局、どんな役目を果たすのでしょうか?

2極管は、無線通信の検波器に使われていました。電波から音声信号を取り出すための回路に使います。後に半導体のダイオードに取って代わられますが、真空管は検波器として利用され始めます。

真空管アンプに使われた真空管とは、別の役目なんですか?

そうですね、別の役目です。2極管を搭載した真空管アンプもありますが、これは整流回路に使われています。真空管アンプ増幅回路に使っているのは、3極管以上になります。

3極管、電極が1つ増えるのですね。

フレミングと同時代に、アメリカでラジオの父と呼ばれたリー・ド・フォレスト3極管を発明します。話せば長いので簡単にまとめると、彼はカソードプレートの間に第3の電極を入れて、ここに電流を流すことで、入力信号を制御できると考えたのです。これはつまり増幅作用ですね。

3極管はカソードとプレートの間にグリッドという電極をもつ。グリッドがないと2極管。

簡単にまとめてもらっても難しいですよ〜。とにかく、3極管には増幅作用があってアンプに使えるんですね。

3極管2極管の効率を高めたものとして、無線受信機の検波回路に使われました。ほぼ軍事用です。最初の3極管は、海軍型オーディオンと呼ばれる縦長のタイプと、民生用の球形オーディオンと呼ばれるものでした。

海軍型オーディオン……画像でググると、軍艦ばかり出てきますね。物騒だ……。

そして、ウェスタン・エレクトリックWE)やゼネラル・エレクトリックGE)が真空管の製造を開始、さらにRCA(Radio Corporation of America)も。第一次世界大戦後にはフィリップスも参入します。

なかなか真空管アンプに行き着きませんが、ラジオの話はまだまだ続くのでしょうか……?

では、直熱管から傍熱管へは省略して……1920年代後半になるとラジオ用スピーカーが進化して、出力管のニーズが高まりました。この頃、イギリスのマルコーニでラウンド大佐が、グリッドプレートの間に金網で作った第2グリッドを入れた真空管を試作しました。これが4極管のルーツです。真空管はさらに5極管ビーム管と進化を続けます。

いきなり、たくさんの種類の真空管が出てきましたね……。整理すると真空管には2極管3極管4極管5極管ビーム管があるということでしょうか? 電極の数が増えてアンプのパワーが大きくなる感じはわかるけど、ビームって……? 強そうですね。

ビーム管は、電極を増やしたときの欠点として、動作が不安定になることがあるので、それに対応するために構造を工夫したものですね。真空管アンプで人気のビーム管もありますよ。私のコレクションの中から紹介しましょう。

 

ビーム出力管「6V6GT」 「6L6」の小型版として登場したビーム出力管「6V6」はバリエーションが多く価格もサイズも手頃で扱いやすいが、なぜか内部が見えないブラックコートタイプが多いのが残念。

 

ビーム出力管「6V6G」 元祖「6V6」は金属管だったが、その後に登場した「6V6G」は肩の張ったST管である。その形からドーム管、ダルマ管とも呼ばれている。ノスタルジックなデザインで小振りなのがいい。

 

ビーム出力管「6L6EH」「6V6S」 1936年に登場したビーム管「6L6」ファミリー。左がElectro harmonicsの「6L6EH」、右がJJの「6V6S」と比べて太くて背が高いことがわかる。どちらも新品の真空管でピカピカだ。

 

ビーム出力管「KT66」 左が英国オリジナルの「KT66」、右がGold Lionの「KT66」で電極構造が異なる事が分かる。「KT88」より繊細な音だ。

 

ビーム出力管「KT88」 「KT66」をパワーアップした「KT88」はプッシュプルアンプの定番として人気の真空管。画像はソブテック製。

やっぱり秘密兵器を使ったのですね……ニヤリ。で、真空管はどのようにアンプに使われるのですか?

真空管アンプは、使っている真空管の種類によって、3極管とそれ以外の多極管に分かれます。またシングルプッシュプルか、という選択肢もあります。シングルは、1本の真空管を使って音を増幅します。プッシュプルは、同じ種類の真空管を2本以上使って、より大きな出力を取り出せる方式です。

そうすると、真空管の種類と本数で、アンプの特徴がわかるってことですね!

一般的に、3極管シングルで、5極管プッシュプルで使うことが多いですね。5極管ビーム管はパワフルでキレのいい音、3極管はやわらかい響きがあり真空管らしい音と言われています。もっともシンプルな構成から箇条書きにすると

 

  • 直熱3極管 シングル(300B、2A3、211、845)
  • ビーム管 シングル(6L6、6V6、6550、350B、KT88)
  • 5極管 シングル(EL34/6CA7、EL84/6BQ5)

 

  • 3極管 プッシュプル
  • 5極管かビーム管 プッシュプル

 

  • 3極管、全段差動
  • 5極管かビーム管、全段差動

 

こんな感じになります。シングルA級ですが、プッシュプルになるとA級AB級B級動作があります。A級で大出力を狙ったのが全段差動アンプです。これ以外に、パラシングルという回路もあります。私の好みがわかってしまいますが、またコレクションからご紹介。

 

直熱3極管「NL-50」 「300B」の類似管と言われるNATIONAL ELECTRONIC「NL-50」アメリカ製。

 

直熱3極管「300B」 中国製PSVANEの「300B」。オリジナルの300Bを忠実に復刻したと言われる。マッチドペアでアンダー2万円というハイコスパで庶民の味方。作りもしっかりしている。

 

直熱3極管「CW-300B」 Western Electric「USN-CW-300B」のペア管。1938年から50年代に発売されたヴィンテージ管なので非常に高価。真空管ファンなら一度は聴いてみたい球である。

 

整流管「WE422A」 「300B」を鳴らすなら整流回路にも真空管を使いたい。そこで登場するのが「WE274B」か、この「WE422A」である。

ようやく真空管の姿を拝むことができました〜。でも、もう頭の中がいっぱいいっぱい……A型とかAB型とか、パラサイトとか〜。

次回は、10月8日、9日に行なわれた「真空管オーディオフェア」の会場で各メーカーの真空管アンプを見ながら、さらに真空管の魅力に迫りたいと思います。

ふぅーっ、私の頭が真空管の熱のように沸騰してきましたー……。

 

 

 

 

 

 


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