第6回:バックロードホーンは、なぜ市販スピーカーにないの?

そろそろ8月も終盤ですね。みなさんも今年の夏のスピーカー工作はもう完成されたでしょうか? ……あれ? たかゆきさん、なんだか今日は不機嫌そうですね。

ゴンさん、聞いてください! 世の中間違ってるよ!

なんだか今回はいつになく不穏ですね。どうしましたか!? 

お盆の休みの間に、大型量販店やオーディオ専門店をまわって、いろんなものを見てきたんです。

おおっ、そうだったんですね! どうでした?

 

 

 

 

売っているのはバスレフ密閉型ばかりで、バックロードホーンが全然扱われてない! これどうゆうことですか!? 市販スピーカーの世界において、官僚の忖度があったんじゃないかと思わざるを得ない、ゆゆしき事態です!

単に「忖度」って言いたかっただけでしょ!

バレましたか!
いや、でも「オンラインショップでもエンクロージュア・キットにバックロードホーンがたくさんあるのに、メーカー製に見かけないのはどうしてなんだろう?」というのはずっと疑問に思っていました。なんでですか?

バックロードホーン各種は、「工作キャンペーン」の対象商品として絶賛実施中です!

「いい質問ですね!」……とでも言うと思いました? それはメーカーの広報の人に聞いてください!

もう〜! そんな冷たいことをおっしゃらずに!

単純な話です。バスレフ型スピーカーが素晴らしいので、他の方式よりも断然進歩してしまい、現在も進歩を続けているからですよ。世の中のクルマがほとんど4サイクル・レシプロエンジンを採用しているのと同じです。

4サイクル・レシプロエンジン、らしいです

 

左から密閉式、バスレフ式、バックロードホーン。箱の方式によって、特に低音の鳴りが異なる。

????? すみません、電車で例えてくれないとピンときません……。

バックロードホーンは、例えれば、ロータリーエンジンですね。特殊な用途では抜群の性能を発揮しますが、汎用生に乏しく、メリットもあればデメリットもある感じです。今年のモーターショーでは、マツダがロータリーエンジン50周年を記念して「RX-9」を市場に投入するという噂もありますね!

わかったような、イマイチわからないような……。では、バックロードのメリットとデメリット教えて下さい。

バックロードホーンの一番のメリットは、小出力で大音量が出せることですね。大出力を取り出すのが難しかった真空管アンプの時代には、劇場用としても使われていました。

その頃は、バックロードの栄光の時代、とでもいうべき時代だったのでしょうか!?

もうひとつは、小型ユニットで量感ある低音が出せること。ハイスピードで解像度が高く、ダイナミックレンジが広いというメリットもあります。

小型ユニットで低音が出せるのはありがたいですね。小出力で鳴らせるなら、真空管アンプと組み合わせるのもいいかもしれませんね!

デメリットとしてはスピーカー背部に折りたたんだホーン音道として作るため構造が複雑になり、生産コストがアップすること。バックロード向きのユニットが必要になること。箱を大型化してユニットを大口径化しても、低音の再生限界があること。音道を長くすると、低音の遅れが感じられることです。

大型バックロードホーンの3DCADによる設計図。かなり複雑な構造であることがわかる。

確かに、キットの板数もバックロードホーンは多いですものね。作るのが大変な割にはメリットが少ないのでしょうか?

そうですね。トランジスタアンプの登場によって、容易に大出力が得られるようになりました。さらに、今ではクラスDアンプ(デジタルアンプ)の登場で、手のひらサイズのアンプで充分な駆動力が得られます。

それならバックロードよりも、バスレフマルチウェイでワイドレンジを目指したほうが、高性能が得られます。軽い振動板で能率の高いユニットも必要なくなり、重い振動板で歪まずにストロークの深い低能率ユニットを使えば、小口径でも重低音が出せます。

つまり、スピーカーは単体では鳴らないので、アンプとペアで考えなければいけない訳ですね。

そうです、あとは時代がどんな音を求めているのか。

昔は大音量で低音がドカーンと出ること。つまりダイナミックレンジと低域方向のワイドレンジでした。

それから楽器の音色やボーカルの音色がいかにリアルに再現されるか。

その後にアタック感、スピード感、ステレオ感、広がり感、奥行き感などの音場感が求められました。

なるほど、よりリアルに、そこにオーケストラがいるかのように厳密に再生することが追求されてきたのですね。

バックロードホーンは、進化の途中で時代のニーズと合わなくなり、メーカーから忘れ去られた存在になったのです。でも、その音には独自の魅力があり、今でも熱狂的なファンがいるため、エンクロージュアのキットでは不動の人気があります。

自作派向けに、フォステクスバックロードホーン専用ユニットを生産し続けています。

う〜ん、鉄道でムリヤリ例えてみるなら、寝台列車のようなものでしょうか? 座席夜行車を快適化するために、1961年の全国白紙ダイヤ大改正から多くの寝台車が投入されたわけですが、1970年代になってから新幹線や高速道路網、航空路線などに押されて、どんどん寝台列車が衰退、時代の表舞台から姿を消した……と思いきや、「ななつ星in九州」のように、鉄道の旅を楽しむために不死鳥のように蘇った寝台専用列車!

まあ、ノスタルジーだけでなく、バックロードホーンは限られた局面においては、バスレフより有効なこともあります。その設計と板取、加工、製作が難しいので、自作派においてはバックロードを作れば一人前、上級者の仲間入りというマイルストーンの役割もあります。

先ほどの大型バックロードホーンはBearHornのキット。板材が何枚必要かを検討中。斜線の板は補強用に使っている。

 

大型バックロードホーン1本分の板材を並べたところ。

 

音道が完成して側板を貼ろうとしている。吸音材はほとんど使っていない。

 

トールボーイタイプのバックロードホーンキット。内部は音道のみであることがよくわかる。

そんなにバックロードバスレフで音が違うのでしょうか?

それではここで、8cmメタルコーン・フルレンジ「M800OMF800Pが使えるバックロードホーン型エンクロージュア・キットの音を聴いてみましょう。


オンラインショップで販売中!

音源には「究極のオーディオチェックCD 2017〜ハイレゾバージョン データディスク〜」を使います。

オーディオ評論家の石田善之氏による録音。こちらも販売中です!

せっかくなので、出力3W+3Wの6V6Sを使った中華製真空管アンプで鳴らしてみましょう。スピーカーユニットは「M800」が付いています。

ゴンさんがebayで入手した真空管アンプ。

 

8cmのメタルコーンフルレンジユニット「M800」が付いたコンパクトなバックロードホーン。

バスレフよりも開口部が広いせいか、明るく開放的な音がしますね。バスレフ密閉式は箱の中に空気がこもっていて、それを押しのけてスピーカーが動くイメージですが、バックロードは後ろの空気がサッと押されて抵抗なく動いているようです。順路が決まっている美術館のように、ストレスなく進めるというような……。バスレフは人気のある絵の前に人が群がっちゃって、急いでいる人はその中を進んでいかなくちゃいけないみたいな?

それが明るくヌケが良く元気な音につながるのかもしれません。スパッと歯切れのいい音で、低域を欲張らずに、鳴りっぷりのいいスピーカーに仕上がっていますね。今度はユニットを「OMF800P」にしてみましょう。

同じく8cmフルレンジユニットは、フェイズプラグ付きのフォステクス付録シリーズの最新作。MOOKで好評発売中!

先ほどより、高域の繊細な感じが出てきました! これがイコライザーの効果なんでしょうか? 低域の感じは同じですが、中高域に変化がありました。

どちらもメタル振動板で口径も同じですが、「OMF800P」は「M800」の進化版ですから、さらに音がブラッシュアップされていますね。センターのイコライザーが高域特性を改善しているに違いありません。

では、ここで……ぜひゴンさんに聴いてほしくて用意した、とっておきのものがあるんですよ〜!

おっ、なんでしょうか!?

ジャーン! 炭山アキラさんが設計されて、そのエンクロージュア・キットをオントモ・ヴィレッジで発売予定の「コサギ」です! パイオニアの6cmユニットを搭載しています。

8月末から予約受付開始!

長岡鉄男先生スーパースワンの発展形でしょうか。なかなか凝った作りですね。製作するのが大変そうです。

板数が1本で34枚もあります。

先ほどのバックロードは8cm用としてもサイズが小さく、音道も短かったのですが、コサギは音道が長く、低域の量感、低域の再生限界ともに伸びています。先ほどより板厚も厚いので、箱鳴りも抑えられていますね。さらにユニットの周りの板の面積が狭く、ほぼ点音源化されているため、音場感も抜群にいいです。

先ほどの8cm対応エンクロージュアはコンパクト。

 

炭山アキラ氏設計の「コサギ」は音道が長い。

 

ここの部分が小さいと音場感がいい。

確かに6cmでこんなに低音が出るなんてバックロードマジックですね! メーカーは研究をやめたようですが、バックロードにもまだまだ可能性はあるんだ! 時代は巡る。いつかまた、バックロードが見直されるときが来ることを期待したいですね。

バスレフ型にはしっかりしたダクトの計算式がありますが、バックロードホーンの音道設計に関しては、完成された計算式が存在せず、まだまだ未知の部分があります。自作で市販品に勝てる可能性が高いジャンルですね。私も個人的にバックロードの音は好きですよ!

最近ゴンさんが作ったバックロードホーン。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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